
ルーマニアを楽しむために重要な要素の一つは、もちろん「ルーマニア料理」です。日本人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、ルーマニアは農業、畜産ともに盛んな国でもあり、新鮮な食材を使った食事は日本人の舌に合うものばかり。このページでは、ルーマニアの伝統料理について写真も交えながらご紹介します。
ルーマニアの伝統料理とは?
ルーマニアでは、現在でも家庭で料理を作って食べることが一般的です。近年では各国の料理が楽しめるレストランやファストフードのお店もたくさんありますが、イベントなどでも各家庭で作って食べることが多く、クリスマスやイースターともなれば、何時間もキッチンにこもって特別な料理を作る伝統も続いています。料理はルーマニアの歴史を映し出すように、様々な地域、文化の影響を受けて発展してきたと言えますが、ここでは、ルーマニア料理を形作るエッセンスと影響について掘り下げていきます。
歴史的影響
- ローマ帝国 :ルーマニアの国名はラテン語の “Romanus “に由来しており、ローマ帝国との歴史的なつながりを示しています。ローマ帝国の影響は、小麦やブドウ、オリーブといった要素をもたらし、ルーマニア料理の主食の基礎を築いたと言えるでしょう。
- 東欧: ルーマニアはハンガリー、ウクライナ、セルビア、ブルガリアといった国々と国境を接しており、これらの国々は貿易や文化交流を通じてルーマニア料理に足跡を残してきました。ハンガリー料理やスラブ料理の影響は、特定の料理や食材において特に顕著です。
食材
ルーマニア料理は、この国の豊かな農業を反映して、地元産の食材がふんだんに使われています。主食としては、トウモロコシや小麦、ジャガイモが主で、季節により各種野菜も豊富。酪農も盛んにおこなれており、チーズやサワークリームなどの乳製品もたくさんの種類があります。特にカルパティア山脈が豊富な放牧地を提供しているため、高品質の乳製品や肉製品も生産しています。肉類は豚肉が最も多く、次いで鶏肉、牛肉、羊肉と続きます。
旬と保存
伝統的なルーマニア料理は、旬の食材はもちろんのこと、材料の保存技術を駆使して長く味わえるよう工夫されています。代表的なもので言えば、ピクルスなどの漬物、肉類の燻製、乳製品や酒類など。発酵食は、果物や野菜、肉を保存し、寒い時期に食べるためによく使われる方法です。例えば、キュウリのピクルス(murături)やザワークラウト(varză murată)は、特に冬の間、多くの料理に添えられます。
味の特徴
ルーマニア料理の特徴は、素材を活かした味付けとボリューム感で、塩味、酸味、甘味のバランスが取れていることが多いと言われています。ニンニクやタマネギ、パプリカ、ディルなどのハーブやスパイスが頻繁に使われますが、スパイシーな料理は少なく、あくまで料理に深みを与えるように使用されているのです。例えば、サワークリーム(smântână)は、スープやシチュー、様々な料理の付け合わせに使われ、味にコクと酸味を加えます。
地域の多様性
多様な地理と文化遺産を持つルーマニアは、料理にも地域差があります。例えば、トランシルヴァニア料理はハンガリーやサクソン人の伝統の影響を受けており、モルダヴィア料理は隣国ウクライナの影響を受けています。各地域には、その土地の食材、気候、歴史的影響を反映した独自の名物料理や伝統料理があるのです。また、同様のメニューでも地域によって呼び名が異なる場合もあります。
全体的にルーマニア料理は、この国の複雑な歴史、多様な文化的影響、豊かな天然資源を反映しており、素朴で素材を活かした味わいと季節感を大切にしながら、家族や友人と食卓を囲み、心のこもった料理を仲間と楽しむ、喜びを讃える料理と言えるでしょう。
写真とともに見るルーマニア料理
ルーマニア料理の定番メニューを写真とともにご紹介します。レストランで注文する時などに参考にして下さいね。
【前菜】
ルーマニア料理において、前菜は「aperitive」と言います。レストランで食べるルーマニア料理は、基本的にボリュームたっぷりなので、前菜とメインを分けて注文すると食べきれないことも多々あります。何人かで集まって食べる時などに、ぜひさまざまな前菜にチャレンジしてみてくださいね。一般的なルーマニア料理の前菜を見てみましょう。

Salată de vinete / サラタデヴィネテ
サラタデヴィネテは、よく焼いたナスの果肉を滑らかなるまで潰し、細かく刻んだタマネギやニンニク、マヨネーズとよく和え、塩やパセリ、または他のハーブなどの材料を加えて風味を高めたスプレッドです。パンに塗って食べることがほとんどで、冷やして楽しむことが多く、ナスが旬の夏によく食べられます。とても爽やかで日本人にもかなり親しみやすい逸品と言えるでしょう。

Zăcusca / ザクスカ
ザクスカは野菜のスプレッドまたはレリッシュです。主に、ナスやピーマン、トマト、玉ねぎ、ニンニクなどの野菜を煮詰めて作られます。地域のバリエーションに応じて、ニンジンやキノコが加えられることも。一般的に、パンやクラッカーに塗ったり、肉やチーズと一緒に楽しんだり、盛り合わせの一部として登場。秋になると各家庭で調理され、瓶に保存し、一年中楽しみます。保存食なのでお土産にも人気です。

Salată de icre / サラタデイクレ
サラタデイクレは、魚の卵を使用したスプレッドです。一般に新鮮な鯉やサンマの卵に、サラダ油やレモン汁、細かく刻んだシャロット、玉ねぎを加えて攪拌、ペースト状にしてあります。軽くてふわふわした口当たりが特徴で、スライスしたパンに塗って、刻んだ赤玉ねぎとオリーブをトッピングすることも。写真は赤ですが、白っぽいことが多いです。

Salată de boeuf / サラタデビョフ
サラタデビョフは、ルーマニア風のポテトサラダです。茹でたジャガイモ、ニンジンなどの根菜を細かく刻み、エンドウ豆やピクルスを加えてマヨネーズで和えます。伝統的には、茹でた牛肉を加えますが、家庭では鶏肉、または肉を入れずに作ることも一般的です。イベントごとに欠かせない料理で、ケーキ型を取り、ゆで卵やオリーブ、パプリカなどでデコレーションします。

Jumări / ジュマリ
ルーマニア料理の珍味とも称されるジュマリは、豚肉の脂肪や皮を揚げ焼きにした料理です。塩またはパプリカで味付けされ、食感はカリカリ。そのままスナックとして楽しむこともできますし、パンと一緒に食べたり、シチューやスープ、サラダなどの料理のトッピングとして食べることも。他の伝統的なルーマニア料理とともにクリスマスやお祝いのテーブルに登場します。

Tobă / トバ
トバは通常、クリスマスと新年に楽しまれる特別な料理です。豚の頭や足を中心に、さまざまな部位から作られる豚のミートローフのような逸品。豚の独特な匂いも感じるので好き嫌いは分かれるかもしれませんが、多くのルーマニア人にとってはご馳走です。マスタードやピクルス、パンと一緒にいただきます。

Răchituri / ラチトゥリ
地域によってピフティまたはアスピックとしても知られるラチトゥリは、豚の耳や鼻、時には肉くずなど、豚肉のさまざまな部分から作られる料理です。豚肉の冷たいゼリーといった具合で、特にお祝いや行事の際に、前菜または軽食として楽しまれています。豚の豊かな風味と独特の食感が魅力で、無駄になってしまう豚のさまざまな部位を活用した、ルーマニア料理の機知に富んだ料理と言えます。
【スープ】
ルーマニアといえば、ルーマニア語で「チョルバ」と呼ばれるおいしいスープが自慢です。これらのスープはルーマニアの美食に欠かせないもので、前菜としても、メイン料理としても、もしくは軽食としても楽しめます。ここではルーマニアの定番スープをいくつか紹介します。

Ciorbă de Burtă / チョルバデブルタ
チョルバデブルタは、牛の胃袋と赤唐辛子のスライスが入ったスープです。ニンニクがかなり効いており、酸味のあるクリーミーなスープが特徴。伝統的に、シシトウのような生トウガラシと少量のサワークリームを添えて提供されます。生トウガラシを齧りながらスープをいただきましょう。日本人には馴染みの薄い味わいですが、一口食べれば虜になること間違いなし。ただしニンニクが強いのでその点はご注意ください。

Ciorbă de perișoare / チョルバデペリショアレ
チョルバデペリショアレは、酸っぱいスープにミートボール(ペリショアレ)を入れた料理です。ミートボールはひき肉(牛と豚の合挽)、お米、玉ねぎ、ニンニク、さまざまなハーブやスパイスを加えて作られます。ボルシ(発酵させた小麦ふすま)を加えた酸味のある風味豊かな味わいで、特に寒い季節に心地よい食事として人気があります。

Ciorbă de Lobodă / サルマーレ
チョルバデロボダは、新鮮なほうれん草の葉を使ったスープです。 「ロボダ」はルーマニア語でほうれん草を意味し、この野菜の風味と栄養上の利点を強調しています。新鮮なほうれん草の葉、玉ねぎ、ニンニク、ニンジン、ジャガイモなどが入っており、味わいは優しく風味豊か。栄養価が高く心安らぐ料理で、新鮮なほうれん草が旬を迎える涼しい季節に特に楽しめます。
このほかにも、魚を使ったスープや野菜のみのスープなど、さまざまなスープがあります。特に、酸味を聞かせたスープは日本人には馴染みがありませんが、一口食べればその味わいの虜になること間違いなし。ぜひチャレンジしてみてくださいね。
【メインディッシュ】
ルーマニア料理では、多様なメインディッシュを提供しています。特に肉を使った料理が多く見受けられますが、海岸沿いの地域では魚介類を使った料理ももちろん豊富。人気のあるルーマニアのメイン料理には次のようなものがあります。これらの料理以外でも、もちろん牛や豚、鶏のステーキ(炭火焼き)なども人気です。

Sarmale / サルマーレ
ルーマニア料理の代表とも言えるサルマーレは、ひき肉(通常は豚肉と牛肉の合挽)に米、玉ねぎ、タイム、ディル、パプリカスパイスなどを混ぜたタネをキャベツの葉、もしくは葡萄の葉に詰めた料理です。通常はトマトソースと燻製肉、ザワークラウトと共に長時間煮込まれ、日本で一般的なロールキャベツとは味わいが異なります。サワークリームとママリガまたはパンが添えられることが多く、特にお祝いの席に欠かせない人気メニューです。

Mămăligă / ママリガ
とうもろこし粉を水と塩で調理したママリガは、濃厚なお粥のような粘度で、ルーマニアにおける主食の一つです。イタリア料理のポレンタと同様に、メイン料理のサイドディッシュとして提供されることもあれば、チーズやサワークリーム、卵を乗せたメインディッシュになることも。その多用途性とボリュームたっぷりの食感により、ルーマニアの美食の一部として愛されています。

Mititei / ミティティ
「ミチ」とも呼ばれるミティテイは、ルーマニアにおけるグリルソーセージ。通常は牛肉と豚肉、または子羊肉を混ぜ合わせたひき肉に、ニンニクや黒コショウ、パプリカ、タイムなどのスパイスを混ぜて炭火焼きされ、パンやフライドポテト、ピクルス、マスタードと共にいただきます。屋台のストリートフードとしても人気ですし、BBQやパーティなどでも定番の逸品です。

Fasole cu Carnati / ファソレククルナティ
ファソレクカルナティは、白インゲン豆(ファソレ)とソーセージ(カルナティ)の煮込み料理です。通常は豆と玉ねぎ、ニンニク、月桂樹の葉で味付けされ、さらに風味付けにトマトやトマトペーストを加え、グリルまたはフライしたソーセージとともに長時間煮込みます。豆の甘さが際立つ料理で、ボリュームもたっぷり。特に寒い季節に好まれています。

Chiftele / チフテレ
チフテレは、ルーマニア風ミートボールで、通常は牛肉や豚肉のひき肉に、玉ねぎ、ニンニク、卵、パン粉、各種ハーブやスパイスを混ぜて作られます。小さなハンバーグのような見た目で、マッシュポテトやご飯、パスタと一緒に供されたり、又は前菜や軽食として楽しむことも。ピクルス、マスタード、またはサワークリームをディップして食べます。

Tochitura / トキトゥラ
トキトゥラはモルダビア地方発祥の伝統的なルーマニア料理です。角切りにした豚肉とソーセージ、玉ねぎ、ピーマン、トマト、そして場合によってはワインを加えて作るボリュームたっぷりのポークシチューで、多くの場合、ママリガ、目玉焼き、ピクルスまたは新鮮な野菜を添えていただきます。特にお祝いの席や家族の集まりの際のメインコースとして楽しまれています。

Ciulama de pui / チウラマデプイ
チウラマデプイは、鶏肉をクリーミーなホワイトソースで煮込んだ料理です。味付けはサワークリームやクリームチーズを使用されることが多く、濃厚なクリームテイストが特徴です。日本でいう、クリームシチューに近い逸品で、ご飯やマッシュポテト、ママリガと一緒に提供されます。
【デザート】
ルーマニアのデザートは、季節のフルーツやナッツ、蜂蜜や乳製品などの伝統的な食材を中心に使って作られるものがほとんどです。家庭でデザートを作る習慣も高く、イベントでは大きなケーキを焼くことも一般的。香り高いラムやレモン・オレンジピールなどで香り高く仕上げられるお菓子もたくさんあります。人気のルーマニアのデザートをいくつかご紹介します。

Papanasi / パパナシィ
ルーマニアのデザートを代表するとも言えるパパナシィは、生地にカッテージチーズをふんだんに混ぜて作られたルーマニア風のドーナツです。きつね色になるまで揚げてあり、外はカリカリ、中は柔らかくクリーミー! パパナシィは通常、サワークリームとチェリーを中心にしたジャムまたはコンポートを添えて温かい状態で提供されます。

Gogosi / ゴゴシ
ゴゴシは、ルーマニアの甘い揚げドーナツのこと。通常、小麦粉、イースト、砂糖、卵、牛乳または水からなるシンプルな生地で作られ、バニラやレモンの皮で味付けされることもあります。一般的なドーナツ型よりも、小さなボールや楕円形に成形されることが多く、きつね色になるまで揚げたのち、粉砂糖がまぶされます。定番のおやつのようなものでストリートフードとしてもよく見かけます。

Salam de biscuiti / サラミ デビスクィティ
サラミデビスクィティは、ルーマニアや東欧で人気のデザートです。サラミと呼びますが、肉は入っておらず、砕いたビスケットやクッキーにココア、バター、砂糖、時にはナッツやドライフルーツを加えて作ります。サラミのような形に成形し、粉砂糖やココアパウダーをふりかけ、冷蔵庫で冷やした後、スライスしていただきます。

Savarină / サヴァリナ
サヴァリナは、名前からもわかるようにフランスのデザート、サヴァランに似たケーキです。イーストを使って焼き上げたしっかりとした生地をラム酒やリキュールのシロップに浸し、チーズクリームや新鮮なフルーツをトッピングします。カップケーキのサイズからホールケーキなどもあり、家庭で作られることもありますし、一般的なケーキ店でも購入できます。

Cornulețe / コルヌレツィ
コルヌレツィは、伝統的な三日月形のお菓子で、クリスマスなどの特別な行事の際にデザートやおやつとしてよく提供されます。クロワッサンに似た形ですが、小さければ小さいほど良いとも言われています。クッキーに近い生地に、クルミやアーモンドなどのナッツを挽いたフィリング、もしくはトルコのスイーツ「ロクム」を入れて焼き上げられます。
今回ご紹介した料理はルーマニアのバラエティ豊かな食文化のごく一部です。ルーマニアに旅行の際はもちろん、日本国内にも数店ではありますがルーマニア料理の専門店がありますのでぜひお出かけになってみてくださいね。
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